Boss MS-3 Multi Effects Switcher レビュー

BOSS から発売されたループスイッチャー兼マルチエフェクターの「MS-3」を買いました。

基本的には3ループのプログラマブルスイッチャーで、ループに接続されたコンパクトエフェクターの ON/OFF を MS-3 から操作できるほか、マルチエフェクターが内蔵されているため、4つのフットスイッチに内蔵のエフェクトを割り当てることができます。

つまり、空間系のエフェクトには MS-3 内蔵のエフェクトを使いつつ、歪み系だけは好きなアナログのコンパクトエフェクターを使う事ができるというわけです。

内蔵エフェクトには Blues Driver や Tube Screamer、RATなどの歪み系のエフェクトも入っているため、ループに何も繋がなくても MS-3 だけで一通りのエフェクトが揃います。

ループスイッチャー機能を持つマルチエフェクターとしては t.c.electronic G-SYSTEM というものがすでにあるのですがこちらはエフェクトボード全体を覆うほど巨大で重く、価格も高価で手が出しにくいものでした。しかし MS-3 は比較的に小型で細長いためエフェクトボードに組み込んで使うことができます。

電源として他社製の 9V DC パワーサプライからでも稼働しますが、280mAのアダプターが付属していることから容量には余裕があるものを用意する必要があります。

内蔵エフェクトと外部エフェクトループ

内蔵エフェクトは歪み系を含む FX1, FX2 と空間系を中心とした MOD1, MOD2 のグループ、ディレイ、リバーブで構成されています。これらをエフェクトループの前後に好きな順番で並べられます。ただしループ1~3はひとまとまりになっており、ループの間に内蔵エフェクトを挟むことはできません。

「FX1 + ループ1, 2, 3 + FX2」のように挟んだり、「FX1 + FX2 + ループ1, 2, 3」のように移動させることはできます。

コンプは FX のグループに含まれるので「コンプ+ブースター+メインの歪み」という使い方をするとオーバーします。

4つのフットスイッチに割り当てられていないエフェクトであってもかけっぱなしで良ければ利用することができます。また、FS-7 などの外部フットスイッチを買えば増設することができます。入力端子は2つあるのでそれに加えてワウやボリューム用のペダルをつなぐこともできます。(ペダル類は BOSS, Roland 以外の製品では正しく動作しないという情報があります。)

エフェクトの設定はパッチとして保存でき、メモリーモードのときは4つのフットスイッチにそれぞれ割り当てられます。この4つのパッチをまとめてバンクと呼び、スイッチの同時押してバンクを切り替えられます。FS-7 などのフットスイッチを増設し、バンク切り替えを割り当てれば同時押しが不要になります。

メモリーモードとマニュアルモード

マニュアルモードの場合4つのフットスイッチでパッチ内のエフェクトやループの On/Off などを操作します。歪みとクリーンを切り替えたりディレイを部分的にかけたい場合はこのモードを使います。フットスイッチの機能割当てはかなり自由が効くのでタップテンポ用のスイッチとして使ったり、押している間だけオンにするといった使い方もできます。

メモリーモードのときにエフェクトの On/Off を切り替えたい場合は別のパッチとして作るかカレントナンバー機能を使います。これは現在のパッチのスイッチをもう一度押すことで何らかの操作を行う事ができる機能です。基本的にはどれか1つのエフェクトを On/Off したり、タップテンポの入力を行うのに使います。また、歪み系の内部エフェクトにはソロモードの設定があり、ソロ時の音量を指定できます。カレントナンバー機能でこのソロモードのトリガーとして割り当てておけば目立たせたい時に音量をアップさせるという使い方ができます。

どう使うかは自由ですが概ね1つのバンクが1曲に相当し、曲中の変化に合わせて4つのパッチを切り替えることになります。そしてパッチ内のちょっとした変更はカレントナンバーで行えるので実質1バンクで8種類の曲調の変化に対応できることになります。

内蔵の歪みはアナログコンパクトエフェクターには敵わないものの、かなりよくできています。実機ほどの荒々しさがないぶん扱いやすいと言ってもいいかもしれません。MS-3 単体でライブをしたとしても満足の行く音が得られると思います。

空間系のエフェクト

個人的には本機をディレイ中心に使うつもりなのでそのあたりについても見ていきます。ディレイにはアナログ風、デジタル、リバースなどのタイプが一通り揃っており、テンポを数値指定するほか、フットスイッチの1つをタップテンポに割り当てれば基本的なディレイの使い方ができます。16分音符のディレイタイムがあるのがありがたいです。音質としては t.c. electronic の Nova Delay や Flashback Delay には劣るものの十分実用的です。

コーラスやその他の空間系に関してはあまり力を入れていないようで必要最低限と言った感じです。このあたりは ZOOM の MultiStomp の方に軍配が上がります。


マニュアルモード切替スイッチを長押しすることでチューナーになります。液晶ディスプレイでの表示にくわえてLEDも点灯するので視認性は良好です。やや針のふらつきがあるので精度を求める人は別途 Polytune などを使うのが良いと思います。

操作性はよく考えられていますが画面の狭さとスイッチの少なさも合って直感的とはいえません。スタジオで音を作り込むならまだしもステージ上の曲間で微調整する気にはなれません。USBでコンピュータに繋げば専用ソフトでエディットできるので本格的な音作りはこちらで行うと便利です。

マルチエフェクターゆえのエディットの複雑さはあるものの使用するのは簡単です。内蔵エフェクトも十分戦力になるものなので巨大なエフェクトボードをシンプルにまとめたり、最小限の機材でジャムセッションに参加したりする際にはベストな機材だと思います。

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